手術をする際にはそれぞれの術式に合わせた体位を取る必要があります。手術室の看護師は外科医師、麻酔科医師と協力しながら体位を作っていきます。体位を取る上で、重要なポイントについてお話していきます。
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- 手術時の体位の目的
- 手術時の体位調整の基本
- 体位調整時の注意点
- 主な体位と起こりやすい神経障害と圧迫部位について
- ■仰臥位
- ■側臥位
- ■腹臥位
- ■切石位
- 同一体位による褥瘡にも注意する
- 主な体位と起こりやすい神経障害と圧迫部位について
手術時の体位の目的
不適切な手術体位は、患者さんの体重や外部からの圧迫による末梢神経障害、発赤や褥瘡などの皮膚トラブル、呼吸・循環障害などの様々な合併症の原因となり、その持続時間が長いほど発生頻度や障害の程度が大きくなります。
患者さんには安全・安楽を保障され最高の看護を受ける権利があり、医療者はそれを保障する責任があります。
体位固定の条件として、
①循環障害や換気障害を起こさない
②過度の圧迫や伸展、牽引による神経系の障害を残さない
③圧迫による発赤・褥瘡、金属への接触による火傷などの皮膚障害を起こさない
④術者にとって良好な術野を確保し、麻酔科医・看護師が患者を管理しやすい
があります。
手術時の体位調整の基本
手術操作が安全で効率的に行われる為に、十分な手術視野を得ることを目的として、術式に応じた体位が取られます。
しかし、手術のしやすさや術野を確保することだけを考えてしまうと、良肢位とかけ離れた体位を取ってしまうことがあります。
体表近くや関節周辺部を走る神経が、過伸展・過屈曲や、突出した骨や固い支持組織によって内部から圧迫されたり、血管の捻転や圧迫による虚血により、しびれや運動麻痺が起こってしまうことがあります。
また、全身麻酔により患者さんが痛みを訴えられないだけでなく、全身麻酔による筋弛緩により生理的な可動域を超えてしまう恐れがあります。
体位調整時の注意点
安全を確保するためには、患者さんの覚醒時の状況(しびれが元々あるか等)や、関節の拘縮や変形による可動域制限がないか確認し、それらを体位固定の際に考慮して作成しなければなりません。また、体位固定を行う上で良肢位とはどういうことか把握しておくことは特に重要な項目になります。
肩関節 | 外転0~30° 外旋20° 内分回し30°(挙上時は90°以内) |
肘関節 | 屈曲90° |
前腕 | 回外回内中間位 |
手関節 | 背屈10~20° |
手指 | ボールを軽く握った位置 母指は対立位 |
股間節 | 屈曲15~30° 外転0~10° 外旋0~10°(切石位時は40°以内) |
膝関節 | 屈曲10° |
足関節 | 背屈0~10° 底屈0~10° |
基本的には手術申し込みの時点で体位が決まっているのですが、まれに間違った体位で申し込みがされている場合があり、その際には手術室看護師の方から担当の外科医師に申し送りをするとスムーズに進みます。看護師も手術体位をしっかりと把握し、外科医師や麻酔科医師と協力していくことは非常に重要になります。
主な体位と起こりやすい神経障害と圧迫部位について
■仰臥位
神経障害
・橈骨・尺骨神経損傷…上肢の手術台への圧迫による
・腕神経叢損傷…上肢の90°以上の拳上と頭部の反対側への回旋による
・腓骨神経麻痺…固定帯などによる腓骨小頭部周辺の圧迫による
圧迫部位
・後頭部、肩甲骨部、肘頭部、仙骨部、踵部
■側臥位
神経障害
・腕神経叢損傷…下側の腕神経叢の圧迫と上側の腕神経叢の伸展による
・腓骨神経麻痺…総腓骨神経圧迫と膝関節部の圧迫による
圧迫部位
・頬部、耳介部、肩甲骨部、肋骨部、腸骨部、大転子部、膝蓋部
■腹臥位
神経障害
・顔面の圧迫、特に眼球の圧迫による眼圧上昇により視力低下
・上肢固定台が尺骨神経を圧迫していると、尺骨神経麻痺が起こる
圧迫部位
・前額部、頬部、眼球、肋骨部、膝蓋部、下肢指先、胸部、腹部
■切石位
神経障害
・膝窩部の圧迫により腓骨神経麻痺を生じる(コンパートメント症候群)
圧迫部位
・後頭部、肩甲骨部、肘頭部、仙骨部
同一体位による褥瘡にも注意する
長時間にわたる同一体位や不適切な体位固定によって、圧迫・摩擦・ずれが起こり、発赤や褥瘡の原因となります。毛細血管が32mmHgを超えると循環不良となり、さらに毛細血管圧70mmHgで2時間を超えると、組織は不可逆的な阻血性障害に陥ります。手術体位による褥瘡が発生しやすいのは、脂肪や筋肉が少なく、骨が突出していて、手術台や固定具に接触する部位です。
・基本的なスキンケア(洗浄・清潔・保湿・保護)を行い、体圧を分散させる
・皮膚の浸軟(ふやけ)がないよう、洗浄液や血液、便などから皮膚を保護する
・接触面積をできるかぎり広範囲にし、褥瘡発生部位の体圧をできるだけ分散させる
・支持器や医療機器が直接皮膚に当たらない様にする
・体位固定や体位変換の後は、チーム全体が協力して声出し、指差し確認を行い、正しい体位固定になっているか確認する
などといった対策が必要です。
患者さんによって可動域が異なっていたり、元々脳梗塞などで神経障害があったり拘縮があったりと、個別性があります。術前から術後にかけて皮膚トラブルが無い様に、また神経障害が術前から比べて悪化させない様に体位固定を行うことが重要です。
【参考文献】
1. 公益社団法人 日本麻酔科学会,他:日本麻酔科学会・周手術期管理チームプロジェクト,周術期管理チームテキスト 第2版.公益社団法人 日本麻酔科学会,2011.
2. 雄西智恵美 秋元典子,編:成人看護学 周手術期看護論 第3版.ヌーヴェルヒロカワ,2014.
3. 竹内登美子,編著:周手術期看護Ⅰ 外来/病棟における術前看護.医歯薬出版,2000.
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1問 〜 60問
61問 〜 120問
1問 〜 60問
61問 〜 120問
第 1 問 〜 第 15 問
- 第 1 問平成25年(2013年)の国民生活基礎調査による有訴者率(人口千対)で正しいのはどれか。
- 1.12.4
- 2.112.4
- 3.312.4
- 4.512.4
- 第 2 問平成25年(2013年)の感染症発生動向調査による年間の性感染症〈STD〉(sexually transmitted disease)報告数で最も多いのはどれか。
- 1.性器クラミジア感染症(genital chlamydiosis )
- 2.尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum )
- 3.性器ヘルペス(genital herpes)
- 4.淋菌感染症(gonococcal infection)
- 第 3 問平成25年(2013年)の国民医療費はどれか。
- 1.約400億円
- 2.約4,000億円
- 3.約4兆円
- 4.約40兆円
- 第 4 問介護保険法で第1号被保険者と規定されているのはどれか。
- 1.45歳以上
- 2.55歳以上
- 3.65歳以上
- 4.75歳以上
- 第 5 問看護師の業務従事者届の届出の間隔として規定されているのはどれか。
- 1.1年
- 2.2年
- 3.5年
- 4.10年
- 第 6 問標準的な発育をしている乳児の体重が出生時の体重の約2倍になる時期はどれか。
- 1.生後3か月
- 2.生後6か月
- 3.生後9か月
- 4.生後12か月
- 第
7 問第二次性徴による身体の変化で正しいのはどれか。
- 1.精通
- 2.体重減少
- 3.内臓脂肪の増加
- 4.第1大臼歯の萌出
- 第 8 問老年期の身体的な特徴で正しいのはどれか。
- 1.尿量の増加
- 2.味覚の感度の向上
- 3.体温調節能の低下
- 4.外来抗原に対する抗体産生の亢進
- 第 9 問医療法で「地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わせる能力を有すること」と定められているのはどれか。
- 1.助産所
- 2.診療所
- 3.特定機能病院
- 4.地域医療支援病院
- 第 10 問
※採点除外等の取扱いをした問題
【採点上の取扱い】正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外する。
ヒューマンエラーによる医療事故を防止するための対策で最も適切なのはどれか。
【理由】問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため。- 1.性格検査の実施
- 2.事故発生時の罰則の規定
- 3.注意力強化のための訓練の実施
- 4.操作を誤りにくい医療機器の導入
- 第 11 問大動脈に血液を送り出す部位はどれか。
- 1.左心室
- 2.右心室
- 3.左心房
- 4.右心房
- 第 12 問喀血が起こる出血部位で正しいのはどれか。
- 1.頭蓋内
- 2.気道
- 3.食道
- 4.胆道
- 第 13 問胸痛を訴えるのはどれか。
- 1.髄膜炎(meningitis)
- 2.腎結石(renal stone)
- 3.急性心筋梗塞(acute myocardial infarction)
- 4.Ménière〈メニエール〉病(Ménièreʼs disease)
- 第 14 問小脳失調でみられるのはどれか。
- 1.下肢の麻痺が認められる。
- 2.姿勢保持が困難になる。
- 3.血圧が不安定になる。
- 4.体がこわばる。
- 第 15 問
※採点除外等の取扱いをした問題
【採点上の取扱い】正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外する。
【理由】問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため。- 1.身体拘束
- 2.心血管障害
- 3.低栄養状態
- 4.電解質バランス異常
第 16 問 〜 第 30 問
- 第 16 問目的とする効果が安定して発現するまでに最も時間がかかる薬はどれか。
- 1.睡眠薬
- 2.鎮痛薬
- 3.抗うつ薬
- 4.抗血栓薬
- 第
17 問医薬品表示を別に示す。
劇薬の表示で正しいのはどれか。- 1.①
- 2.②
- 3.③
- 4.④
- 第 18 問自力での摂取が困難な臥床患者の食事介助で適切なのはどれか。
- 1.水分摂取の介助を控える。
- 2.仰臥位の姿勢を保持するよう介助する。
- 3.食事内容が見える位置に食器を配置する。
- 4.患者の下顎が上がるよう上方からスプーンで介助する。
- 第 19 問足浴の効果で最も期待されるのはどれか。
- 1.食欲増進
- 2.睡眠の促進
- 3.筋緊張の亢進
- 4.皮膚温の低下
- 第 20 問療養施設、社会福祉施設等が集合して設置されている地域の昼間の騒音について、環境基本法に基づく環境基準で定められているのはどれか。
- 1.20dB以下
- 2.50dB以下
- 3.80dB以下
- 4.110dB以下
- 第 21 問オートクレーブによる滅菌法はどれか。
- 1.乾熱滅菌
- 2.プラズマ滅菌
- 3.高圧蒸気滅菌
- 4.酸化エチレンガス滅菌
- 第 22 問点滴静脈内注射中の刺入部位の腫脹を確認したときに、最初に実施するのはどれか。
- 1.体位を変える。
- 2.注入を中止する。
- 3.刺入部位を挙上する。
- 4.周囲のマッサージを行う。
- 第 23 問成人患者の気管内の一時的吸引における吸引圧で正しいのはどれか。
- 1.-100〜-150mmHg
- 2.-200〜-250mmHg
- 3.-300〜-350mmHg
- 4.-400〜-450mmHg
- 第 24 問包帯法の原則として適切なのはどれか。
- 1.患部を強く圧迫する。
- 2.屈伸可能な関節は固定する。
- 3.中枢から末梢に向けて巻く。
- 4.使用部位によって包帯を使い分ける。
- 第 25 問経腟分娩の正常な経過で最初に起こるのはどれか。
- 1.発露
- 2.排臨
- 3.胎盤の娩出
- 4.児頭の娩出
- 5.子宮口の全開大
- 第 26 問単層円柱上皮はどれか。
- 1.表皮
- 2.腹膜
- 3.膀胱
- 4.胃
- 第 27 問角加速度を感知するのはどれか。
- 1.耳管
- 2.前庭
- 3.耳小骨
- 4.半規管
- 第 28 問縦隔に含まれるのはどれか。
- 1.肺
- 2.胸腺
- 3.副腎
- 4.甲状腺
- 第 29 問膵液について正しいのはどれか。
- 1.弱アルカリ性である。
- 2.糖質分解酵素を含まない。
- 3.セクレチンによって分泌量が減少する。
- 4.Langerhans〈ランゲルハンス〉島のβ細胞から分泌される。
- 第 30 問ホルモンと分泌部位の組合せで正しいのはどれか。
- 1.サイロキシン ──── 副甲状腺
- 2.テストステロン ──── 前立腺
- 3.バソプレシン ──── 副腎皮質
- 4.プロラクチン ──── 下垂体前葉
第 46 問 〜 第 60 問
- 第 46 問疾患と原因となる生活習慣の組合せで適切なのはどれか。
- 1.低血圧症(hypotension) ──── 飲酒
- 2.心筋梗塞(myocardial infarction) ──── 長時間労働
- 3.悪性中皮腫(malignant mesothelioma) ──── 喫煙
- 4.1型糖尿病(type1diabetes mellitus) ──── 過食
- 第 47 問自動体外式除細動器〈AED〉による電気的除細動の適応となるのはどれか。
- 1.心静止(asystole)
- 2.心房細動(atrial fibrillation)
- 3.心室細動(ventricular fibrillation)
- 4.房室ブロック(atrioventricular block)
- 第 48 問術中の仰臥位の保持によって発生することがある腕神経叢麻痺(brachial plexus palsy)の原因はどれか。
- 1.上腕の持続的圧迫
- 2.前腕の回外の持続
- 3.肘関節の持続的圧迫
- 4.上肢の90度以上の外転
- 第 49 問
点滴静脈内注射によって抗癌薬を投与している患者の看護で適切なのはどれか。
- 1.悪心は薬で緩和する。
- 2.留置針は原則として手背に挿入する。
- 3.血管痛がある場合は直ちに留置針を差し替える。
- 4.2回目以降の投与では過敏症の症状の確認は必要ない。
- 第 50 問Aさん(60歳、男性)は、慢性心不全(chronic heart
failure)の終末期で、積極的な治療を行わないことを希望している。現在、入院中で、リザーバーマスク10L/分で酸素を吸入し、水分制限がある。時々息切れがみられるが、Aさんは面会に来た長女との会話を楽しみにしている。バイタルサインは呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧76/50mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉88%であった。
このときの対応で最も適切なのはどれか。- 1.面会は制限しない。
- 2.水分制限を厳しくする。
- 3.Aさんに仰臥位を維持してもらう。
- 4.面会中は酸素マスクを鼻腔カニューラに変更する。
- 第 51 問Aさん(42歳、女性)は、3日前から微熱と強い全身倦怠感を自覚したため病院を受診したところ、肝機能障害が認められ、急性肝炎(acute hepatitis)の診断で入院した。1か月前に生の牡蠣(かき)を摂取している。Aさんはこれまで肝臓に異常を指摘されたことはなく、家族で肝臓疾患を罹患した者はいない。
Aさんが罹患した肝炎について正しいのはどれか。- 1.細菌感染である。
- 2.劇症化する危険性がある。
- 3.慢性肝炎(chronic hepatitis)に移行しやすい。
- 4.インターフェロン療法を行う。
- 第 52 問ホルモン負荷試験について正しいのはどれか。
- 1.ホルモン分泌異常を生じている部位の推定に用いる。
- 2.分泌異常が疑われるホルモンを投与する。
- 3.前日の夕食から禁食にする。
- 4.入院が必要である。
- 第 53 問乳癌(breast cancer)の自己検診法の説明で適切なのはどれか。
- 1.月経前に行う。
- 2.年に1回実施する。
- 3.指先を立てて乳房に触る。
- 4.乳房の皮膚のくぼみの有無を観察する。
- 第 54 問高齢者の看護において目標志向型思考を重視する理由で最も適切なのはどれか。
- 1.疾患の治癒促進
- 2.老化現象の進行の抑制
- 3.病態の関連図の作成の効率化
- 4.生活全体を豊かにするケアの実践
- 第 55 問高齢者の活動と休息のリズムの調整について最も適切なのはどれか。
- 1.午前中に日光を浴びる機会をつくる。
- 2.昼食後に入浴する。
- 3.昼寝をしない。
- 4.就寝前に水分を多く摂る。
- 第 56 問加齢による咀嚼・嚥下障害の特徴で正しいのはどれか。
- 1.咳嗽反射が低下する。
- 2.口腔内の残渣物が減る。
- 3.唾液の粘稠度が低下する。
- 4.食道入口部の開大が円滑になる。
- 第 57 問Aさん(85歳、女性)は、両側の感音難聴(sensorineural deafness)で「音は聞こえるけれど、話の内容が聞き取れないので困っています」と話した。
Aさんに対する看護師の対応で適切なのはどれか。- 1.大きな声で話す。
- 2.話の内容をより詳しく説明する。
- 3.Aさんが文字盤を使えるようにする。
- 4.看護師の口の動きが見えるように話す。
- 第 58 問Lewy〈レビー〉小体型認知症(dementia with Lewy bodies)の初期にみられる症状はどれか。
- 1.幻視
- 2.失語
- 3.脱抑制
- 4.人格変化
- 第 59
問介護保険法で「入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設」と規定されているのはどれか。
- 1.介護老人保健施設
- 2.介護老人福祉施設
- 3.介護療養型医療施設
- 4.介護療養型老人保健施設
- 第 60 問出産や育児に関する社会資源と法律の組合せで正しいのはどれか。
- 1.入院助産 ──── 児童福祉法
- 2.出産扶助 ──── 母体保護法
- 3.出産手当金 ──── 母子保健法
- 4.養育医療 ──── 児童手当法