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目次
- 絞扼性神経障害とは?
- 神経障害と絞扼部位
- 手根管症候群
- 手根管
- 原因
- 症状
- 正中神経麻痺|理学療法士・作業療法士国家試験必修ポイント
- 治療
- 演習問題
- 参考文献
絞扼性神経障害とは?
脊髄に出入りする末梢神経は身体各部位を走行しています.走行中に骨,靭帯,筋などにより形成された管腔(トンネル)を通過します.この管腔の部分で持続的に圧迫や異常刺激が加わった場合に起こる単神経障害を絞扼性神経障害と呼びます.
神経障害と絞扼部位
代表的な神経障害と絞扼部位を表に示します.
神経障害 | 絞扼部位 |
腕神経叢麻痺 | 胸郭出口症候群 |
尺骨神経麻痺 | 肘部管症候群,ギヨン管症候群 |
正中神経麻痺 | 手根管症候群,円回内筋症候群,前骨間神経麻痺 |
橈骨神経麻痺 | 回外筋症候群,後骨間神経麻痺 |
坐骨神経麻痺 | 梨状筋症候群 |
脛骨神経麻痺 | 足根管症候群 |
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手根管症候群
絞扼性神経障害の中で発生頻度の高い手根管症候群を解説します.
手根管
手根管は8個の手根骨と屈筋支帯で形成される管腔です.手根骨の配列は手掌に対して凹状のカーブを描きます.
手根間の中を浅指屈筋,深指屈筋,長母指屈筋,正中神経が通過します.手根管内圧が上昇することで正中神経が圧迫され絞扼性神経障害が生じます.
原因
特発性(原因不明)が多い傾向です.手の使い過ぎ,妊娠,閉経など女性に好発します.また,関節リウマチ,透析者のアミロイド性滑膜炎,ガングリオン,手根骨脱臼,変形性手関節炎などにより生じる場合があります.
症状
正中神経が圧迫されるため正中神経低位麻痺の症状が出現します.夜間就寝時や早朝に症状が強く寝る傾向です.
目次正中神経の走行正中神経麻痺受傷転機低位麻痺高位麻痺感覚障害検査ファレン(Phalen)テストパーフェクトOテスト参考文献 正中神経の走行 正中神経の走行を示します.左から右へ遠位へ向かっている図に ...
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治療
症状が軽度の場合は手関節の固定やビタミンB12製剤を使用します(保存療法).強い疼痛,症状の進行,外傷や感染で生じた場合など保存療法で改善が認められない場合は,屈筋支帯(横手根靭帯)を切開して,正中神経への圧迫を除去する手根管開放術を実施します.近年は関節鏡視下で実施されます.
演習問題
絞扼部位と症状の組み合わせで誤っているのはどれか.2つ選べ.
1.手根管―猿手
2.梨状筋―下腿内側のしびれ
3.肘部管―tear drop
4.足根管―足底のしびれ
5.腓骨頭―下垂足
解答・解説はクリック☝️
解答 2・4
解説
2.梨状筋での絞扼により坐骨神経麻痺が生じる.坐骨神経が支配する感覚は下腿外側である.下腿内側は伏在神経(大腿神経)である.
4.tear dropは正中神経(特に前骨間神経麻痺)で生じる.肘部管の絞扼では尺骨神経麻痺が生じる.
手根管症候群で正しいのはどれか.2つ選べ.
1.女性に比べ男性に多く発症する.
2.尺側の手掌に感覚障害が生じる.
3.手を振るとしびれが軽減する.
4.母指球筋の萎縮が認められる.
5.フロマン徴候は陽性になる.
解答・解説はクリック☝️
解答 3・4
1.手根管症候群は男性に比べ女性に多い.
2・5.尺骨神経麻痺で生じる症状である.手根管症候群では正中神経麻痺が生じる.
3.手を振ると正中神経への圧迫軽減に伴いしびれが軽減する.
参考文献
・野村嶬:標準理学療法学・作業療法学 専門分野 解剖学 第3版.医学書院.
・井樋栄二ほか:標準整形外科学 第14版.医学書院.
・立花勝彦ほか:標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 整形外科学 第4版.医学書院.
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- 第47回(H24)
2021年12月13日2022年11月12日
46 絞扼性神経障害と症状の組合せで正しいのはどれか。
1.肘部管症候群:母指外転障害
2.後骨間神経麻痺:母指内転障害
3.手根管症候群:母指対立障害
4.梨状筋症候群:大腿前面のしびれ
5.足根管症候群:足背のしびれ
解答・解説
解答3
解説
1.× 肘部管症候群は、尺骨神経障害が起こる。肘部管症候群は、尺骨神経が肘関節背面内側にある尺側骨手根屈筋下の肘部管を通過する際に生じる絞拒性障害である。尺骨神経麻痺を来し、指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。ちなみに、長短母指外転筋の支配神経は、橈骨神経深枝(C6~C8)である。短母指外転筋の支配神経は、正中神経(C8,T1)である。
2.×
後骨間神経麻痺は、橈骨神経(深枝)の障害が起こる。下垂指(手首の背屈は可能だが、手指の付け根の関節の伸展ができなくなり、指のみが下がった状態)がみられる。ちなみに、母指内転筋の支配神経は、尺骨神経深枝である。
3.〇 正しい。手根管症候群は、母指対立障害が起こる。他にも、正中神経が障害され、猿手がみられる。ちなみに、手根管症候群は、正中神経が手根管を通過する際に生じる絞扼性神経障害である。
4.× 梨状筋症候群は、大腿前面のしびれではなく、大腿後面のしびれを生じる。なぜなら、梨状筋症候群は、坐骨神経が大坐骨切痕と梨状筋との間で圧迫を受ける絞扼性神経障害であるため。
5.× 足根管症候群は、足背のしびれではなく、足底のしびれを生じる。なぜなら、足根管症候群は、後脛骨神経が脛骨内果後下方の報帯性の狭いトンネル部で圧迫を受ける絞扼性神経障害であるため。
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47 DDSTで10か月児が通過率75 %以上で可能なのはどれか。2つ選べ。
1.立位へ引き起こすとついてくる。
2.しゃがんだり立ったりする。
3.つかまり立ちする。
4.ひとり立ちする。
5.ひとり歩きする。
解答・解説
解答1/3
解説
DDSTとは?
DDSTとは、『デンバー式発達スクリーニング検査』のことである。発達分野を『個人-社会』『微細運動-適応』『言語』『粗大運動』に分け、それぞれの各発達項目で25%、50%、75%、90%の通過月齢が長方形で示されている。
1.〇 正しい。立位へ引き起こすとついてくるのは、9~10か月で可能になる。10か月児が通過率75 %以上で可能となる。
2.× しゃがんだり立ったりするのは、14~15か月で可能になる。
3.〇 正しい。つかまり立ちするのは、8~9か月で可能になる。10か月児が通過率75 %以上で可能となる。
4.× ひとり立ちするのは、13~14か月で可能になる。
5.× ひとり歩きするのは、14~15か月で可能になる。
48 慢性腎不全患者に対する運動療法として正しいのはどれか。
1.高血圧症合併例では等尺性運動を避ける。
2.運動負荷の指標に自覚的強度は適切でない。
3.腹膜透析(CAPD)導入後は歩行訓練を避ける。
4.むずむず足症候群では下肢運動は禁忌となる。
5.下肢の浮腫には起立台での起立訓練が有効である。
解答・解説
解答1
解説
1.〇 正しい。高血圧症合併例では等尺性運動を避ける。運動療法は、等尺性運動より有酸素運動が好ましい。なぜなら、降圧効果があるため。運動の種類としては、歩行や軽めのランニング、水泳などである。高血圧症合併例に対し、等尺性運動は禁忌である。なぜなら、血圧を上昇させる作用があるため。
2.×
運動負荷の指標に自覚的強度(Borg指数など)は、適切である。運動強度は、運動時の負荷やきつさに相当し、指標には、心拍数や酸素摂取量、自覚的運動強度、エネルギー代謝率(RMR)、METSなどが使用される。
3.× 腹膜透析(CAPD)導入後も、歩行訓練を実施する。なぜなら、腹膜透析は血液透析より循環動態への影響は少ないため。透析中に適度な運動を行うことにより、透析効率が上昇することがあると報告がある。施設によっては、腹膜透析中に、歩行や自転車エルゴメーターを実施するところもある。透析効率が上昇すれば、1回の透析治療で更に多くの毒素を除去することができる。
4.×
むずむず足症候群に対し下肢運動が禁忌といったことはない。むずむず足(脚)症候群とは、腎機能障害や透析患者に多く、日本において成人の3%程度にみられるとされる。就床すると足がむずむずする、ほてる、かゆいなどの異常な感覚が生じ、下肢を動かさずにいられなくなる。症状が軽い患者の場合は、①脚のストレッチや②マッサージの実施、③日常生活における指導(飲酒・喫煙・カフェインを控えるなど)をする。
5.× 下肢の浮腫に、起立台での起立訓練はむしろ逆効果である。なぜなら、重力により循環不全が起こるため。下肢の浮腫には、下肢の挙上や下肢の運動、マッサージが有効である。
慢性腎不全患者に対する運動療法の効果
最大酸素摂取量の増加
左心室収縮機能の亢進(安静時・運動時)
心臓副交感神経系の活性化
心臓交感神経緊張の改善
栄養低下、炎症複合症候群の改善
貧血の改善
不安・うつ・QOLの改善
ADLの改善
死亡率の低下
前腕静脈サイズの増加
透析効率の増加など
49 熱傷患者の理学療法で誤っているのはどれか。
1.温浴時に関節可動域訓練を併用する。
2.植皮術直後から関節可動域訓練を行う。
3.ゆっくりした持続的な皮膚の伸張を行う。
4.スプリントの圧迫によってケロイド形成を抑制する。
5.初期の安静肢位として肩関節外転・外旋位をとらせる。
解答・解説
解答2
解説
熱傷の理学療法
①変形拘縮の予防
②瘢痕形成予防
③浮腫の軽減
④筋力維持改善
⑤全身体力の維持など。
1.〇
正しい。温浴時に関節可動域訓練を併用する。なぜなら、熱傷では皮膚組織の破壊により可動域が制限されるため。関節可動域訓練は、時間をかけ持続的・愛護的に行う。
2.× 植皮術直後から関節可動域訓練を行う必要はない。なぜなら、移植直後から関節可動域訓練すると、移植された皮膚の生着を妨げるため。ちなみに、生着とは、移植した細胞や組織、臓器が正常に機能している状態のことである。
3.〇 正しい。ゆっくりした持続的な皮膚の伸張を行う。なぜなら、皮膚の瘢痕形成・組織の収縮化を防ぐため。
4.〇 正しい。スプリントの圧迫によってケロイド形成を抑制する。ケロイドとは、皮膚の深いところにある真皮という部分で炎症が続いてしまうことにより生じる疾患である。炎症であるため、痒みや痛みを伴う。ケロイドは審美的、機能的に障害を残すため、その予防が必要となり、スプリントの圧迫を実施する。
5.〇
正しい。初期の安静肢位として、肩関節外転・外旋位をとらせる。なぜなら、体幹の熱傷では肩関節の内転・内旋拘縮を予防するため。
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50 癌患者の緩和ケアにおけるリハビリテーションについて正しいのはどれか。
1.肺癌がある場合は呼吸介助が禁忌となる。
2.病名告知を前提として、理学療法を行う。
3.疼痛コントロールを目的とした理学療法は行わない。
4.この段階ではリンパ浮腫に対する理学療法は行わない。
5.患者の意思に合わせて理学療法の目的を変更する。
解答・解説
解答5
解説
緩和ケアにおける理学療法の目的
緩和ケアにおける理学療法は,回復を目的としたトレーニングとは異なる。回復が望めない中にあってその苦痛の緩和に努め,残された機能を最大限に生かし,安全な生活を支えることが必要である。また,残された機能を生かし支えることは,ひいては患者や家族の実際的ニーズや希望を支えることにもなる。さらに,その過程においてさまざまな患者の訴えに心を傾け,患者に寄り添うことは,理学療法士が提供できる大切な心のケアと考える。
①疼痛・苦痛の緩和:リハにおいてもまず取り組む課題である。(安楽死位、リラクゼーション、物理療法、補装具の検討、電動ベッドなどの検討)
②ADL 能力維持・援助:特に排泄動作に関する要望が多い。(移動能力維持、環境設定、ADL訓練、介助法の指導)
③精神面の援助:死を受け入れていくうえでも「どのように生きるか」が重要である。
④家族への援助:家族から要望があれば介助方法や援助方法(マッサージの方法など)を伝達する。
⑤廃用性変化の予防・全身機能維持:リハが日常生活にリズムをつくる。
※(参考:「緩和ケアにおけるコメディカルの役割と人材の育成」著:下稲葉 主一(栄光病院リハビリテーション科))
1.× 肺癌がある場合でも、呼吸介助は禁忌ではなく、むしろ必要となる。呼吸困難を伴うため、体位変換なども駆使し痛みや苦痛を緩和する。
2.× 病名告知を前提として、理学療法を行う必要はない。なぜなら、患者本人や家族の意向によって告知がなされないこともあるため。
3.× 疼痛コントロールを目的とした理学療法を中心に行う。疼痛コントロール(ペインコントロール)を目的として、温熱・寒冷療法、経皮的電気刺激(TENS)、およびマサージなどが用いられる。
4.×
この段階に至っても、リンパ浮腫に対する理学療法は行う。リンパ浮腫があれば、下肢の挙上、弾性包帯・弾性ストッキングによる圧迫、マッサージ、関節可動域訓練などを行う。
5.〇 正しい。患者の意思に合わせて理学療法の目的を変更する。緩和ケアでは月単位、週単位、日単位で容態が変化するため、患者の意思、状況を最優先とするケア及び理学療法を行っていく。患者が前向きな生活ができるように援助する。