本ガイドラインは、あらたな知見が得られたときなど、修正の必要が生じた場合に、理事会の承認を得たうえで適宜改定される。 令和4年6月2日 バセドウ病の診断ガイドラインa)臨床所見1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見 2.びまん性甲状腺腫大 3.眼球突出または特有の眼症状b) 検査所見 1.遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値 2.TSH低値(0.1μU/ml以下) 3.抗TSH受容体抗体(TRAb)陽性、または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性 4.典型例では放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性1)バセドウ病 a)の1つ以上に加えて、b)の4つを有するもの2)確からしいバセドウ病 a)の1つ以上に加えて、b)の1、2、3を有するもの3)バセドウ病の疑い a)の1つ以上に加えて、b)の1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3ヶ月以上続くもの【付記】1コレステロール低値、アルカリホスファターゼ高値を示すことが多い。2遊離T4正常で遊離T3のみが高値の場合が稀にある。 3眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが、遊離T4およびTSHが基準範囲内の例はeuthyroid Graves' diseaseまたはeuthyroid ophthalmopathyといわれる。 4高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする。5小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さ等を認める。6遊離T3(pg/ml)/遊離T4(ng/dl) 比の高値は無痛性甲状腺炎の除外に参考となる。7甲状腺血流増加・尿中ヨウ素の低下が無痛性甲状腺炎との鑑別に有用である 甲状腺機能低下症の診断ガイドライン【原発性甲状腺機能低下症】 無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声等いずれかの症状b)検査所見 遊離T4低値(参考として遊離T3低値)およびTSH高値 原発性甲状腺機能低下症 【中枢性甲状腺機能低下症】 a)臨床所見無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、 便秘、嗄声等いずれかの症状b)検査所見 遊離T4低値でTSHが低値~基準範囲内 中枢性甲状腺機能低下症 除外規定 無痛性甲状腺炎の診断ガイドラインa)臨床所見1.甲状腺痛を伴わない甲状腺中毒症 2.甲状腺中毒症の自然改善(通常約3ヶ月以内)b)検査所見 1. 遊離T4高値(さらに遊離T3高値) 2.TSH低値(0.1μU/ml以下) 3.抗TSH受容体抗体陰性 4.放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率低値1)無痛性甲状腺炎 a)およびb)の全てを有するもの2)無痛性甲状腺炎の疑い a)の全てとb)の1~3を有するもの 除外規定 慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドラインa)臨床所見1.びまん性甲状腺腫大(萎縮の場合もある) 但しバセドウ病など他の原因が認められないものb)検査所見 1. 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)陽性 2.抗サイログロブリン抗体陽性 3.細胞診でリンパ球浸潤を認める1)慢性甲状腺炎(橋本病) a)およびb)の1つ以上を有するもの【付記】1阻害型抗TSH-R抗体などにより萎縮性になることがある。2他の原因が認められない原発性甲状腺機能低下症は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。3甲状腺機能異常も甲状腺腫大も認めないが抗TPO抗体または抗サイログロブリン抗体陽性の場合は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。4自己抗体陽性の甲状腺腫瘍は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いと腫瘍の合併と考える。5甲状腺超音波検査で内部エコー低下や不均質を認めるものは慢性甲状腺炎(橋本病)の可能性が強い。 亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドラインa)臨床所見有痛性甲状腺腫b)検査所見 1. CRPまたは赤沈高値 2.遊離T4高値、TSH低値(0.1μU/ml以下) 3.甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域1)亜急性甲状腺炎 a)およびb)の全てを有するもの2)亜急性甲状腺炎の疑い a)とb)の1および2 除外規定 改定記録2022年3月1日 改定内容:「抗マイクロゾーム抗体」試薬終売のため 2022年6月2日 改定内容:改定方法の変更、他 |