まもなく今年も確定申告シーズンを迎える。今年の確定申告(2021年分所得について2022年に提出する確定申告)から、個人投資家に朗報がある。それは、上場株式の配当や公募株式投信の分配金につき、「税率を抑えられる課税方式」を簡単に選べるようになったことだ。 Show
現在、上場株式の配当や公募株式投信の分配金の課税方式は、申告分離課税・申告不要・総合課税の3種類あり、3つの課税方式を所得税と住民税でそれぞれ任意に選ぶことができる。それぞれの方式を選択した場合の税率は投資する商品やその人の所得により異なるが、例えば年金生活者が国内上場株式の配当や日本株に投資する公募株式投信の分配金を受け取るほとんどのケースでは、「所得税は総合課税・住民税は申告不要」という課税方式を選ぶことで、正味税率を5%まで引き下げることが可能である(※1)。 もっとも、昨年の確定申告(2020年分所得について2021年に提出する確定申告)までは、「所得税は総合課税・住民税は申告不要」という課税方式を選ぶための手続きは複雑で、所得税の確定申告書を税務署に提出するのみならず、別途、住民税の申告書を作成して市区町村の窓口に提出しなければならなかった。しかし、今年の確定申告(2021年分所得について2022年に提出する確定申告)からは、所得税の確定申告書の「特定配当等の全部の申告不要」欄に〇印を1つつけるだけで住民税の手続きは不要となった。手続きが複雑なために諦めていた方は、ぜひ今年こそ「所得税は総合課税・住民税は申告不要」という課税方式の選択にトライしてほしい。税金の還付により、これまでの投資の成果をより実感できることになるだろう。 一方、個人投資家に悲報もある。残念ながら2022年度の税制改正により、この課税方式は今年と来年のあと2回(2022年分の所得について2023年に提出する確定申告まで)しか使えず、以後は所得税と住民税の課税方式が統一される見込みなのだ。所得税と住民税で課税方式が異なるのは確かに制度として複雑であり、税制の簡素化という点では理解できる。しかし、ほとんどの納税者にとって金融所得に係る税率が給与所得や年金などに対する税率と比べて高水準である中(※2)、「所得税と住民税で異なる課税方式の選択」は中低所得者の金融所得に対する税率を給与所得や年金並みに抑える機能を持っていた。 政府・与党内では金融所得に係る課税の全体像を見直す機運が高まっているが、その際には、個人の資産形成・資産選択や、市場に与える影響、富裕層の海外移転の可能性などに留意しつつも、どの程度の所得・資産を保有している者のどのような金融所得に対してどの程度の負担を求めていくのか、明確なビジョンの策定が望まれる。 (※1)国内上場株式の配当や日本株に投資する公募株式投信の正味税率を5%(所得税は配当控除により実質0%、住民税は5%)とするためには、納税者の課税所得金額が195万円以下であることが条件となる。 このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。 所得税と異なる課税方式による個人住民税の課税選択について更新日:2022年1月5日 概要平成29年度税制改正で、特定配当等に係る所得や特定株式等譲渡所得(上場株式等の配当・譲渡所得のうち、特定口座において所得税と住民税が源泉徴収されているもの)については、所得税と異なる課税方式を選択できることが明確化されました。 課税のしくみと他制度への影響特定上場株式等の配当等については、所得税15.315パーセント(復興特別所得税分含む)と住民税5パーセント(配当割)の合計20.315パーセントの税率で源泉徴収(特別徴収)されています。(源泉徴収がされる特定口座の上場株式等譲渡所得も同じ) 所得税と異なる課税方式による個人住民税の課税選択をした場合の国民健康保険税への影響について 所得税と異なる課税方式による個人住民税の課税選択をした場合の後期高齢者医療制度への影響について 個人住民税で所得税と異なる課税方式を選択する場合に必要な手続きと申告期限納税通知書が送達される日までに、確定申告書とは別に、市役所へ特定配当等・特定株式等譲渡所得金額申告不要申出書(市民税・都民税申告書)を提出いただくことにより、所得税と異なる課税方式(申告不要制度(源泉分離課税)、申告分離課税、総合課税)を選択することができます。なお、市への申告の前に税務署で確定申告書の提出を行っていただきますようお願いいたします。 特定配当等・特定株式等譲渡所得金額申告不要申出書(市民税・都民税申告書)(PDF:277KB) 特定配当等・特定株式等譲渡所得金額申告不要申出書(市民税・都民税申告書)【記入例】(PDF:162KB) 手続に必要な書類等
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令和6年度(令和5年分)以降の上場株式等に係る所得の課税方式の選択の取り扱いについて令和4年度税制改正により、令和6年度(令和5年分)以降の市民税・県民税については、所得税と課税方式を一致させることとなりました。このことにより、所得税と市民税・県民税で異なる課税方式(源泉分離課税、総合課税、申告分離課税)を選択することができなくなります。 また、この措置により、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除についても所得税と一致するよう規定の整備が行われます。 上場株式等の配当等に係る課税方式の選択について 「令和5年度(令和4年分)までの取り扱い」上場株式等の配当所得及び譲渡所得(源泉徴収を選択した特定口座分)については、所得税及び県民税(配当割・株式等譲渡所得割)があらかじめ源泉徴収(特別徴収)されるため、申告をしないで源泉徴収(特別徴収)だけで済ませる申告不要制度を選択できます。 また、各種所得控除・税額控除の適用や譲渡損失の損益通算及び繰越控除等を行うために、総合課税または申告分離課税を選択して申告することも可能です。 なお、下記の(2)の方法により、所得税と住民税とで異なる課税方式(源泉分離課税、総合課税、申告分離課税)を選択することができます。 (1)課税方式の選択ができる所得所得税及び復興特別所得税15.315%と県民税5%(配当割・株式等譲渡所得割)の合計20.315%の税率で源泉徴収(特別徴収)されている上場株式等の配当所得及び譲渡所得です。 なお、所得税及び復興特別所得税20.42%のみ源泉徴収されている非上場株式の配当所得等は対象外です。 (2)課税方式が選択できる期限と方法((AまたはBの方法のいずれかの方法)住民税の納税通知書(特別徴収税額の決定通知書を含む)が送達される日までに、 A.確定申告書の第2表の住民税・事業税に関する事項の特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要の欄に〇を記入して確定申告を行うこと。 B.住民税の申告書に「上場株式等の所得に関する住民税課税方法選択の申出書」及び収入関係書類(特定口座年間取引報告書や支払い通知書等の写し、確定申告書の控えの写し)を添付して提出すること。 なお、所得税の確定申告後、上記方法による住民税の課税方式の選択をしない場合は、所得税の確定申告における課税方式が適用されます(但し、住民税の納税通知書(特別徴収税額の決定通知書を含む)送達後に確定申告を行った場合を除きます)。 (3)注意事項
Q&AQ 住民税の課税方式の選択に関する手続きは、確定申告の前後どちらで行うのか。 A 確定申告の前後は問いませんが、各種控除や損益通算の計算など、確定申告書提出の際に税務署の判断で内容が変更となる場合もございますので、先に確定申告書を提出し、その控えを持って住民税申告を行うことをお勧めします。 住民税の申告書には「上場株式等の所得に関する住民税課税方法選択の申出書」及び収入関係書類(確定申告書の写し、特定口座年間取引報告書の写しや支払通知書等の写し)を添付してください。 Q 住民税の納税通知書送達後に配当所得を新たに加える確定申告(修正申告を含む)を行った場合、住民税の課税方式はどうなるのか。 A 地方税法上、「住民税の納税通知書送達までに提出」と規定されているため、納税通知書(特別徴収税額の決定通知書を含む)送達後は課税方式を選択することはできません。これにより、納税通知書(特別徴収税額の決定通知書を含む)送達までにこの所得を確定申告されなかった場合は、源泉分離課税(申告不要制度)を選択したものとみなされ、納税通知書送達後に配当所得を新たに加える確定申告(修正申告を含む)を行っても、住民税の税額算定には算入されません。 Q どの課税方式を選択するのが良いのか。 A 所得金額や控除額の状況などの課税要件のみならず、社会保険(国民健康保険税、介護保険料、後期高齢者医療制度保険料等)の加入状況も人によって異なりますので、どの課税方式を選択するのが良いのか一概には言えません。これらの状況を踏まえ、ご自身で総合的にご判断いただくこととなります。 特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部について、住民税で申告不要としますか?令和3年分以降の確定申告書において、第2表の住民税に関する事項により、特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部について申告不要を選択できることとなりました。 申告不要を選択した場合、当該所得に係る配当割額控除・株式等譲渡所得割額控除の適用はありませんので、還付(または減額)を受けることはできません。
申告不要制度のデメリットは?確定申告不要制度を選択すると配当控除が受けられない
始めるのも納税も簡単な確定申告不要制度ですが、デメリットもあります。 それは確定申告不要制度を選択すると、配当控除が受けられないことです。 配当控除とは、配当所得に対して一定の金額で受けられる税額控除です。
住民税申告不要制度 いくらまで?対象は「課税所得額900万円以下」だけ
つまり、申告不要・分離申告課税のままのほうがいいことになる。 課税所得額というのは、年金収入や配当収入そのものの金額ではない。 各種所得の合計額から社会保険料控除や基礎控除などの控除額を差し引いた後の金額を言う。
一般口座の住民税申告不要制度は?「特定口座(源泉徴収無し)」や「一般口座」内の譲渡所得に係る課税方式は「申告分離課税」のみとなり、「申告不要制度」は選択できません。
所得税と住民税で異なる課税方式 いつまで?所得税と異なる課税方式を選択できる個人住民税の申告期限
原則として、当該年度の申告期限(令和4年3月15日)までに申告が必要です。 ただし、期限後であっても、市県民税納税通知書の送達前までに申告されたものは有効となります。
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